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第1回 原色の時代を迎えたラーメン

1910年――初のラーメン店と言われる『来々軒』が浅草で開業して1世紀あまり。TOKYOのラーメン文化は多彩に、そして豊穣に進化を遂げた。クラシカルな醤油ラーメンに始まり、札幌から日本中を席巻した濃厚味噌ラーメン、博多発の豚骨ラーメン……。

東京で発祥した味も、全国各地から発信されるご当地の味は首都、いや麺都に集積され、メディアの脚光を浴びる。それはさながら、TOKYOラーメンコレクション。

このTOKYOラーメンコレクションには、特濃つけ汁に極太麺を合わせるつけ麺、パワフルでガッツリな豚骨魚介系、タレや油を麺とからめていただく油そば、まろやか・クリーミーな鶏白湯(トリパイタン)..etc.毎シーズン、新たな角度からトレンドが投入されてきた。そこには、ひたすら積み重ねられた技術の集積、まだ見ぬ味へのあくなき挑戦がある。職人と食べ手が織り成す欲望のスパイラルアップが、TOKYOラーメンを牽引してきたのだ。

そんなTOKYOラーメン進化史をヴィジュアルで切り取ってみたら、面白い変遷が見える。
黄金色(醤油)や茶(味噌)から白灰色(豚骨)、茶濁(豚骨醤油)へ――ラーメンの色味はアースカラーを基調としつつ、徐々にバリエーションを増してきたことが分かるだろう。

そして、今。
TOKYOラーメンは、ヴィヴィッドな原色の時代に突入している。気鋭の職人たちは、「野菜」「鶏」を新製法で再構築。鮮やかな原色ヴィジュアルと味蕾に弾けるフレッシュな味のマッチングを実現させている。さっそく、TOKYOラーメン“原色の時代”を先導する2杯を紹介してみたい。


●フレッシュな野菜のショーケース・ラーメン

ベジソバ

まずは、『ソラノイロ』店主・宮崎千尋氏が創造した「ベジソバ」だ。

センターで存在感を発揮するのは蒸しキャベツの千切り。脇を固めるブロッコリー、ジャガイモ、パプリカもどっさりとトッピング。丼のふちに塗られているのは、赤ゆずこしょう&マッシュバターだ。

いざ実食。

原色を重ねた油絵のような見た目から一転、多様な旨みのミクスチャーが口中に広がる。

ベースは鶏と魚介のダブルスープで、重層的なダシ感を強調。合わせる塩ダレにはムール貝、干しエビ、ホタテなどを濃縮し、素材由来の塩味をプラス。さらに、ニンジンをグラッセした野菜ピュレを用いて、ほんのりとした甘味もかけ合わせている。パプリカパウダーを練りこんだ麺と合わせて咀嚼したら、ピリッとした辛味も感じられるだろう。

マッシュバターを溶かしてみると、ほんのりとした甘みのシルエットがさらに強調され、やさしいスープのような味わいに。スパイシー感を望むなら、赤ゆずこしょうを投入して味変化の妙を楽しんでもいいだろう。


●純白のラーメン世界へとご招待

鶏ポタらあめん


『ささりんどう』の「鶏ポタらあめん」は、さながらビシソワーズのようなホワイトラーメン。水菜の緑、コーンの黄色、トマト香味油のオレンジが浮かぶさまが何とも美麗だ。

店主の石川タツヤ氏が開発したこの純白ラーメンは、「鶏白湯スープ」「野菜ポタージュ」「魚介スープ」を別々に仕込んだトリプルスープがベース。注文のたびに3種のスープをミキサーにかけ、絶妙な粘度感のスープに仕上げているそう。

いざ実食。

スープをレンゲに乗せてみると、白い泡立ちはさらに美麗。野菜ポタージュは鶏白湯・魚介スープと芳醇な旨みの三重奏を奏でつつ、粘度ほどのしつこさ、コッテリ感を感じさせない。

口にしてみると、まったり感が口に心地よいものの、すーっと飲める。とろっと快楽的な粘度、軽やかな質感が魔術的に両立しているのだ。真っ白なルックスながら、その中身は実に豊穣。3つのスープを丁寧に重ね、バランスを取って創り出された味に驚かされる。

原色のラーメンが五臓六腑を駆け抜けた。
「ベジソバ」「鶏ポタらあめん」とも、スープ・サラダ(野菜)・メインディッシュ(チャーシュー)・主食(麺)を丼の中にオールインワン。まさに、ラーメンのフルコースと称したい佳作だ。

●TOKYOラーメン、鮮烈な新次元

土の茶色、木々の緑からコンクリートの灰色、ガラスの透明へ。TOKYOの街がカラートーンを変えてきたように、ラーメン丼の中も、時代とともに目まぐるしく変化を続けてやまない。

そう、鮮やかな原色で迫り来る2杯のルックスは、ラーメンの「進化」を体現している。
他方、醤油、味噌、塩、豚骨といったスタンダードラーメンは個々にブラッシュアップを重ねて「深化」を続けている。

「進化」と「深化」のタペストリーの中、ラーメンコレクションは上書き更新され、今日もアップデートされ続けていく――。

原色の時代に開花する美麗・極旨なラーメンを目と舌で存分に味わおう。

そこには、TOKYOラーメン最前線を行く悦びがあるのだから。


【TOKYOラーメン連載目次】
第4回 TOKYOラーメン、そのオープンソースの思想
第3回 「情報を食う」の、その先へ――TOKYOラーメンGeeksの今
第2回 どこから来たのか、TOKYOラーメン
第1回 原色の時代を迎えたラーメン


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